短歌2009
なにもかも目分量でもうまくいく肉じゃがなんてレアケースだし
手の中でぎゅっと握ってひらいたらばらばらになる落ち葉みたいだ
マフラーでぐるぐる巻きの帰り道 What a nice day to be happy
自分じゃない人になりたい だからまず西荻窪へ引っ越しをする
撮ってすぐデータを消去してしまうトイデジカメのような生き方
空を飛ぶ方法なんて知らなくて多摩川沿いで凧を見ている
ケータイが鳴らないことを確めるために起き続ける29時
再起動するのを待っているあいだ机の下で手をつないでて
迷わないリズムで道を踏み外す覚悟を決める甲州街道
思い出す必要のないことばかり思い出してはうなされている
うたた寝をしていたせいで眠れないわけではなくて 上弦の月
左手の小指がちぎれちゃうくらい寒い季節に出会いたかった
暮らすにはいい街だから幸せが転がっていてたまにつまづく
ケータイがふるえることを祈ってる 迷子になりたがってたくせに
愛された記憶をひとつずつなぞる これとそれとを比べてしまう
あたたかくやさしい夢から目覚めたら今日はやっぱり昨日のつづき